ある日の出来事

カテゴリ:medicine( 46 )

症例

今は市立の総合病院に勤めているのですが、結構小児症例があることに気がつきます。もちろんこども病院ほどにあるわけではないのですが、働き始めてから約1ヶ月の間に5,6例コンサルトがありました。今日も一例相談がありました。一般病院でもこれらの症例は治療可能だと思いますが、やはりいくつかの問題点に突き当たります。

1 少し専門的な検査などになると、この病院ではやったことがないといわれる。
2 他の医師はほとんど小児など見たことがない。更に看護師も不慣れである。
3 複数科がかかわる児になると、もっと旨くいかない。
4 薬がない

医療側の不慣れで検査に時間がかかる、あるいはまったく出来ない。そうするとデータが揃わず治療方針が決まらない。決まったとしていざ手術と思っても、器械が無かったり、モニタリングができず結局自分の所では治療できない、という事になります。こうなるとやはり専門施設に紹介した方が、医療側も家族も、そして何より児もストレスを感じなくて良いという事になるのかもしれません。
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by ny402 | 2006-12-07 21:00 | medicine

コンビ二感覚

現在の病院に着てから初めての当直を土曜日にしましたのでその感想を。

体制としては、内科、外科、小児科、産科が当直していて、必要ならば専門科を呼ぶようになっています。外科当直など久しぶりで、お腹などしばらく診ていませんでしたが、その日は腹痛患者などあまりいませんでしたので何事も無く過ぎました。土曜の夕方から朝までの外科当直で睡眠は2時間くらい。隣で働いていた内科当直の先生は睡眠ゼロでした。

色々感想はありますが、小児医療という観点から偏見に満ちた感想を少しばかり紹介します。

4歳男児、靴をはいて外で遊んでいる最中、ソテツを蹴ってトゲが刺さったということで団塊の世代のおばあちゃんと一緒に来院。こどもは平気な顔をしているが、おばあちゃんはオドオド。あるかないか分からない位の1mm長のトゲが、足の親指に刺さっています。ピンセットで取っておしまい。

9ヶ月男児、40cm高の大人用ベッドから落ちたということで救急車で来院。こどもは元気、、見るからに若い両親はオドオド。どこにも異常なく、一応虐待の検索もして帰宅していきました。

たまたま遭遇したこの2つのケースから察することは、親力の低下ということでしょうか。始めのケースはおばあちゃん力の低下ですかね。色々考えさせられる当直でした。
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by ny402 | 2006-11-20 11:31 | medicine

頭蓋縫合早期癒合症

前の病院で10月の最後に手術した症例の経過を聞いたので少し書くことにしました。

1歳男児、硬膜下水腫治療のために5ヶ月時にシャントが設置され、その後頭蓋の形態異常を指摘されていました。頭囲は1パーセントタイル程度、brachycephalyとなっている児で、硬膜下水腫の経過は良好なため、まずシャントを抜去し、ついでposterior expansionを計画しました。予定通り輸血は必要でしたが、特に問題なく手術は終了し術後4日目で退院していったそうです。アメリカ並みの入院日数でした。

生後2~3年までの間にシャントが設置されると、小頭や頭蓋形態異常などが生じることは良くあることですが、この問題に対する論文が意外と少ないようです。頭蓋縫合早期癒合症の通常の手術適応と同じように考えて、機能損傷の予防的意味合いとcosmeticな問題の解決が論点となると思われます。
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by ny402 | 2006-11-08 17:51 | medicine

システム

これまで何回か触れましたが、アメリカと日本の医療に決定的な差があるとすれば、それはシステムの違いだと考えています。でもどこが違うのか具体的に説明してみろといわれると、困ってしまいます。人を育てるシステム、教育システム、危機管理システムなどたくさんあると思いますが、私の知り限りの2,3の例に触れてみたいと思います。

組織にとって重要なものはいくつかあるでしょうが、その中の一つは人材だと思います。どう確保し、どう育てるのか。脳神経外科のレジデンシーの数は決まっているので、いかにして優秀な人材を確保するかにどのプログラムディレクターも苦心しています。1年の外科インターンの後、脳神経外科レジデントの生活が始まりますが、PGY2,3は主に病棟業務と救急のfirst callを割り当てているプログラムが多いようです。最近では80 hours ruleのおかげでレジデントの人権は守られ、カンファなどの教育的機会に参加する時間が増加しているという報告がありました。
レジデントならそれぞれの学年に応じた目標があり、業務内容が明確に決められています。もちろんAttending、fellow, nurseその他医療関係者それぞれの役割がきちっと決められていて、レジデントが出来る仕事をAttendingがやれば、早く正確に出来上がるでしょうが時間の使い方としては間違っていると考えられています。本来の業務を遂行するためにそれをサポートする人材が確保されているのが特長でしょうか。”人が足りないから、先生患者さんを検査室に迎えに行ってきて”等と言われていた日本を懐かしく思います。
先日、食事をご一緒した人から聞いた話。アメリカの農業界の話なのですが、お役人はお役人の、現場は現場の論理で話をするため温度差が生じうまくいかない事が多いようです。どこの世界も一緒なんだなあ、という感想を持ちました。アメリカではこれをどう解決しているかというと、両者の中間に立つ人を育てているのだといいます。つまり農業の現場出身の、あるいは現場で研修を受けた人がMBAなどを取得し、両者の橋渡しをするとの事でした。最近医療界でも臨床を経験した医師がMBAを取得したりして、病院のマネージメントに参加することが増えてきているようですが、このような人材を確保することがこれからは重要なのではないでしょうか。

システムは医療制度、保険制度、歴史、文化などをどがえしして考えるわけにはいきません。つまり、アメリカのシステムが良いからといってそれをそのまま日本に押し付けてもうまくいきません。社会に溶け込むようどう融合するかが問題です。
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by ny402 | 2006-07-13 09:00 | medicine

quality

偉そうな事を言える立場ではありませんが、極々私的な経験から言うと日本とアメリカの医療の質に関しては差がない、というのが現在の私の結論です。分野により、また、地域によりバラつきがあるでしょうが、脳神経外科に関する限り同程度のレベルにあり、かつそれは世界的にみるとトップクラスである、といえると思います。
もう一つの結論は、出来る人は出来る、出来ない人は出来ないという事。アメリカでトレーニングを受けたからといって全員が有能なわけではないし、手術がうまいわけではない。教育的観点からすると全体の平均レベルは一定値に落ち着くでしょうが、個人の質に関しては、結局のところその医療関係者個人に帰するということかな、と考えています。手術がうまい人は、細かい所に気を配ると同時に全体的なところも見ています。一方、そうでない人は何時も同じ過ちをおかし、同じcomplicationを作り出します。こういう場面を見ていると、良質のトレーニングは重要だと考えさせられます。もちろんこれは医者に限らず、nurseをはじめ全ての医療関係者に当てはまります。なかなか器械が出てこないでいつも医者をいらいらさせるOR tech, どうでも良いような事を午前4時にコールしてくるnurseがいると思えば、無言で手を出しても次の器械が出てくるOR tech, 適切にupdateしてくれるnurseもいます。結局のところ、professionalとしての個人の意識が重要なのだと思います。
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by ny402 | 2006-07-11 12:00 | medicine

人の量

全体的にみるとやはりアメリカの方が断然多い。何よりもparamedicalとして働く人が多いのがいいと思っています。今回は、質は不問にして、純粋に数の問題を取り上げてみます。
ARNP, RN, iv nurse
ARNPの本来の目的は色々あると思いますが、実際問題として医師不足を補うという目的が大きいと感じます。この制度は、やはりこれからの日本医療制度には必須ではないでしょうか。RNも多数います。私の知る限りの多くの病院では、dayかnightのどちらか12時間、週2-4日勤務という方法をとっています。受け持つ患者の数は2-3人といったところでしょうか。専門職という意味では、iv nurseの存在は欠かせません。採血、IV line, PICC lineの留置までやってくれます。彼らは職人意識が強く、結構よくやってくれるというのが私の印象です。他にもCRNPのように麻酔専門のnurseもいます。

CT/MR tech, PT/OT, RT, MSW, pediatric care codinater, nutrician, pharmacistなどなど。多くのparamedicalの人が働いています。しかも多くの場合、on-call制をとっていて、夜間、休日の労働も当然と思っているので気軽に頼むことが出来ます。

transporter, security, volunteer、telphone operator, 清掃する人々、などなど。この人たちがいないと病院は成り立たないでしょう。

結局、それぞれの職種の人が極力雑用を避け、本来の仕事をおこなうためにシステムが出来上がっているという感じです。医師の報酬は、医師としての専門家が行う専門的な仕事に対してのものである、という考え方です。そのため底辺が広い、結果として働く人が多いというシステムになっているのだと思います。

そしてdoctor
これは足りません。おそらくこの表現は間違っていて、全体的な人数は足りているのかもしれませんが、偏在のため大学、教育関連病院の医師の数は足りません。どの科の医師もつかれきっています。脳神経外科の世界は特殊かもしれませんが、少し触れてみたいと思います。publicな施設では財源不足のためattending physicianを雇えないところもあるようです。この問題に関しては、私立の方に分があるかもしれません。脳神経外科の正規のfellow, residentの数は学会により決められていますのでどの施設でも常にマンパワー不足です。これにはアメリカ特有のシステムが関係しています。private practiceの現場では、訴訟を恐れるあまり、少しでも問題になりそうな症例は大学病院などに送ってしまいます。救急病院であってもくも膜下出血症例などは送ってしまうところもあるようです。最終的に行き着くところとしての大学病院などの施設は常に患者があふれ、少数の、疲弊した脳神経外科医が対応しているのが実情でしょうか。これを解決する手段として取られている方法の一つが、正規外のfellowです。多くは外国からの留学生、residencyに入れなかった医師などによりまかなわれています。トロントもシアトルもこの方法を取っていました。

次回は質について触れてみたいと思っています。
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by ny402 | 2006-06-29 12:00 | medicine

INR 4.0

前回の続きの前に、先週末のon-callの出来事から。

われわれ脳神経外科医が移植医療に関わる事は稀ですが、それでも年に数回あります。一般的に考えるとドナー側の脳死判定を想像させますが、小児施設で働いているためかそれはあまり多くありません。
今回はレシピエント側のケースでした。3歳男児、肝不全でencephalopathyを来たしてICP管理のためにモニターを留置しました。移植肝を待っていた最初の3日間はICPは正常に保たれていましたが、あと数時間という所でICPがスパイク的に上昇、CTで脳内出血が確認されました。その時点でINR1.7、出血自体は小さく、そのまま保存的に様子をみていましたが、時間が経つにつれてINRは上昇。幸運にも半日後に移植にこぎつけましたが、念のためCTを取ってみると出血は増悪して、脳室内に穿破しています。この時のINRは4.0。本来なら血腫除去、脳室ドレナージを置きたい所ですが、この値では手が出せません。幸い保存治療でその場はしのげましたが、移植は成功したが頭蓋内出血で命を落とすところでした。このcoagulopathyに悩まされる症例が年に2,3必ずあります。その度にPICUの医師の努力に頭が下がる思いです。。
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by ny402 | 2006-06-21 18:00 | medicine

6月も中旬を過ぎました。という事は、fellowの生活も後残りわずかということです。そこで今後数回に分けて、pediatric neurosurgery fellowとしての個人的な経験や感想、日米の比較などを書いてみたいと思います。

まず始めに量を取り上げてみました。

症例数:圧倒的にアメリカの方が多い。2年とも、アメリカの中でも症例数の多い小児施設で働いた事もありかなりの数が経験できました。手術数で、おそらく700例/年くらいでしょうか。日本の中では一番多い施設でも年間250くらい、以前働いたことがあるこども病院では100くらいでしたから圧倒的な差です。外科医はやはりskillが売り物ですから、skillを獲得しようとしているtraining中の医師にとっては大きな差だと思います。Epsteinは、手術のskillは自転車に乗るようなもので一度獲得してしまえば忘れないといっています。つまり適切な時期にいい指導を受け、skillを獲得し、ある程度の量をこなすことが必要だと思います。そういう意味では、昨年のマイアミでの経験は大きな糧となっています。

次回は、人の量について、の予定です。
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by ny402 | 2006-06-16 15:00 | medicine

揺さぶられっ子

大隅先生のブログでshaken baby syndromeが話題になっていたので、気になって調べてみた。参考文献はこれこれ
乳幼児のshaken baby症候群の中で触れられているのは22例と少ないが、2番目の文献はSick Kidsを含むカナダ小児施設からのもので対象は364例。これらによるとshaken baby syndromeと診断された対象児の中にはabuse caseでないものも含まれるらしい。”高い、高い”をやっていて受傷する事もあるらしく、abuse caseは32%と記載されている。カナダ文献によるとperpetratorが確認されたのは66%であった。
以前にも書いたが、2歳以下でnon traumaic brain injury患児の場合、abuseを強く疑う事になる。
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by ny402 | 2006-06-07 19:00 | medicine

つづき

昨日書いた記事にusskhawaiiさんからコメントを頂きました。お返事が少し長くなりそうなのでここに書いてみようと思います。

もちろん、頻度の高い疾患から鑑別しなければならないと思います。
アメリカでの教育の優れてる事のひとつにsystematicに考えさせるということがあります。発熱を診たら、鑑別診断として 1oooo, 2@@@@, 3####.....と並べ、得られた情報を基に絞り込んでいきます。そして鑑別診断1を証明するためには、a$$$$、b****、c+++++....という検査が必要で、鑑別診断2のためにはa$$$$、b****、c+++++....という検査が必要、という風に考えろと教わります。もちろん常にこういうやり方をしている訳ではないのですが、大切な考え方だと思います。学生の時、内科診断学の時間に同じ事を教わったような気がしますが、身についていなかった私は昨年マイアミでこの事を思い知らされました。今回のケースではdermal sinusは頻度は少ないけれども見逃してはいけない疾患だと思います。

同じような考え方をすると、腰椎穿刺の前にはICP亢進をr/oしなければならないと言う事を思いつく事が大切で、その方法は何でもよいのではないでしょうか。眼底を見る、ant. fontanelleを触る、CTを撮る、など。眼底などの身体所見のみで診断するのが出来る医者の本来の姿なのでしょうが、実際には最近のCTは撮像時間がほんの2,3秒だし、記録も残るし、ということでCTを撮る事が多いと思いますが。
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by ny402 | 2006-05-28 04:32 | medicine



小児脳神経外科医が綴る日々雑感
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