ある日の出来事

カテゴリ:medicine( 46 )

何時の間にか

もう12月です。先週末はon-callだったのですが、病棟とERに呼ばれ続け、週末だというのに朝っぱらから深夜まで働く羽目になってしまいました。日曜の深夜2時にシャント不全疑いを診て今回のon-callは終了しました。
結局今回はシャント感染1例とシャント不全1例を手術しましたが、3歳のシャント不全の患児は日曜の朝いつもより長い睡眠から目覚め、気分がすぐれずこれはシャント不全だから病院に連れて行けと親に頼んだそうです。着てみると傾眠傾向、心拍数50くらいの徐脈、少し高血圧。CTはスリット状で脳室は変化ありませんでしたが、明らかに臨床症状は頭蓋内圧亢進を示している。一応シャントタップしてみましたが、spontaneous flowなし。その児に言ってあげました。”君は偉い!!!”。結局、ERからORへ直接運ばれ、壊れたバルブを交換して一件落着。手術翌日の今日にはもう元気を取り戻し、家へ帰っていきました。on-callとはいえ好き好んで日曜の夕方に仕事をしたくないと言うのが本音だと思いますが、手術のために集まった脳神経外科、麻酔科、ORやCTのスタッフが手術が終わって異口同音に言いました。
"We saved a child's life."
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by ny402 | 2005-12-06 11:37 | medicine

家族事情

医療を通してみる家族関係、親子関係は、洋の東西を問わず同じような物だと感ずる事がある。両親ともいつも付き添っている家族、その正反対いつ行っても親の顔など決して見ることの無い患児、離婚した親がそれぞれの新しいパートナーを連れて付き添っていいる風景、色々である。そんな中に、アメリカでは普通に見ることが出来る家族形態のひとつとしてadoptationがある。そう言えば、NYにいる時の息子の一番の友達はchinaから来た女の子だったし、白人の夫婦が黒人の子供を連れている風景も何度も見た。

今看ている患児の中に、最近adoptationされて来た7歳のChineseの女の子がいる。先週手術を試行したが、スムースにはいかず少してこずっている。両親は一生懸命看病にあたっているが、患児はまだ英語をあまり理解できない。どこが痛いのか、どれくらい痛いのか、痛みを聞き出すのにも一苦労である。親は、身振り手振り、絵入りのカードを使ってコミュニケーションをはかっているが患児の具合が芳しくない事もあって、昨日はついに通訳を呼んだ。親子間のコミュニケーションに通訳がいるのは普段見られない風景だけれども、それでもその両親は昼夜を問わずいつも患児に声を掛け、看病に励んでいる。アメリカに見るdiversityのひとつである。
子供との会話は早朝の"Have a nice day"だけの我が家よりよっぽど良いかもしれない。
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by ny402 | 2005-11-22 12:37 | medicine

PALS

久しぶりの更新となりました。2週間に一度ウィークエンドのon-callがあるので、その間の休みのウィークエンドには体を休めてなどと考えていると、更新が滞ってしまいます。

先週のウィークエンドは休みだったのですが、PALSの講習会に行ってきました。1年以上も小児病院に勤めているのに、実はまだPALSを取っていなかったのです。晴れてPALS Providerとなりました。講習会は2日間、朝から夕方までありなかなか楽しいものでした。運よくSimuBabyというシュミレーション用のベビーで実習も出来ました。これはPALS実習用に作られたもので、挿管、心マ、点滴、胸腔穿刺などの練習が出来、その効果、効率はコンピュータを通じてモニター上で観察することが出来ます。なんとなくゲーム感覚となってしまうのは否めませんが、おもちゃの人形よりいいかもしれません。一体3万ドルとかいっていました。
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by ny402 | 2005-11-13 04:26 | medicine

臨床判断

この判断力を養うために何年も研修し、勉強しているわけだけれども、これがはっきり言って難しい。科学的根拠、臨床的エビデンス、社会的背景、コストパホーマンスなどなど、いろいろな事を考えて判断しなければならない。
我々の例でいえば、椅子から落ちて頭を打った子供のCTを撮るかどうかとか、頭痛を訴える子供に更に検査を追加するかどうかとか、いつ手術をするかとかどのアプローチを使うかとか、枚挙に暇がない。
リスクマンジメントという観点に立つと、decision making treeがありプロトコールが決まっている事が望ましい。1日目のレジデントであろうと30年目の医師であろうと同じ判断をする事になる。極端な例としては、椅子から落ちて頭を打った子供を救急外来で見たとき、一律にCTを撮るという方法である(落ちた高さが10cmであっても100cmであっても、落ちた所がコンクリートの上であっても芝生の上であっても)。これはアメリカ的な考え方というべきか?
これに対し、もう一つの方法はcase by caseで決定する方法である。ヒストリーを取り、身体所見、神経学的所見をとって自分の知識と経験を元に総合的に判断し、CTを撮るかどうかを決定する。これが本来あるべき姿だと思う。優れた臨床医やmentor達がそうやっているのを見たし、業、アートとしての医療技術はこう伝承されるべきだと思う。しかしコストや訴訟などの観点からそうも言っていられないのも事実である。
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by ny402 | 2005-10-25 09:59 | medicine

視力回復

先週末に紹介されてきた患児。1年位前から頭痛が時々あり、先月中旬には左眼はほとんど見えなくなっていたらしい。そこで眼科に行ったのだが、原因不明といわれたと家族はいう。視力低下は眼疾患だけではなく、頭蓋内疾患でも起こることぐらい眼科医なら知っているはずだけれども、CTも撮られる事無く経過。このような類の症例が多いような気がするのは気のせいか?
結局頭痛のため小児科を訪れ、CTで脳腫瘍が見つかって紹介されてきた。入院時には左眼の視力は20/800, ブラインド状態。月曜日に手術が行われ、(この手術法に文句があるのだけれど、これはまた後日)翌日には20/30まで回復。とりあえず機能回復ということで良かった、良かった。
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by ny402 | 2005-10-20 12:51 | medicine

on callのまとめ

前回書いたように、先週の金曜日からon callをやっていました。前半は手術もなく平和に過ぎたのですが、木曜 金曜と合計で7つ手術をしたので土曜日には13人くらい患児が入院していました。そのため金曜の夜から日曜の朝にかけてbeeperがなりっぱなしという状態、100回くらいなったんじゃないかな、という感じ。内訳は、患児一人に尽き最低でも4回くらいはなる。これで13x4=52回。患児の家族からの問い合わせが10件くらい、コンサルトのお願いなどが10件くらい、ERからが20回くらい。特別トラブルなど起こりませんでしたし、緊急手術もなかったので良かった、良かった。
病院によってシステムの違いがあうようで、ここの病院は、日本のように脳外の患者は脳外科医が診ます。マイアミでは、小児科のレジデントが外科系の患児にも係わるようなシステムだったため、術後の患児であっても熱が出たとか、頭が痛いなどのコールは小児科レジデントが対応していました。そのため、我々はその類のコールからは逃れる事が出来ましたが、ここではそれらが全てon callに掛かって来ます。まずこれに対応するだけで大変。しかも個人的な感想としては、ここでは些細な事でも気軽にコールするようである。そのためか的外れなコールも結構掛かってくる。大げさにいえば、泣いていた患児が笑った、といった類のコールが時々掛かってくる。そんな事を書いていたら、またコールが。チャートに書いてある字が読めない、って、それは私が書いた字じゃないんですけど。字体が違っているんだから、少し考えれば分かるでしょ。
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by ny402 | 2005-10-17 10:43 | medicine

シアトルはもうすっかり秋である。街の木々も紅葉していて、朝晩はもう寒い。我々にとって秋といえば学会シーズンで、今週は日本で脳神経外科学会が開催されたし、来週はボストンでアメリカのコングレスが開かれる。ということで皆でかけてしまって、Dr. Oと二人で留守番をしている。マイアミの時のようにまた10日間連続の0n-callとなりました。どうなることやら。

金曜日の夕方そんな事を思っていたら、いきなりシャント不全の患児が二人もERに来てしまった。結局二人とも手術となり、帰宅したのは深夜だった。その内の一人はアラスカから来たのだけれども、頭痛を訴えて半年くらい前から地元の病院に行っていた。そこでは偏頭痛と診断され、抗うつ剤が処方され、CTも撮られることなく外来通院となっていた。結局患児は今週の月曜日からかなり具合が悪くなり、搬送された日には無呼吸も起こすようになっていた。CTは、正常の範囲内だけれども、以前のスリットな状態にに比べるとやや大きくなった脳室を示していた。小児脳神経外科医が見ればシャント不全だと容易に診断がつく。しかしそれ以外の医師にとっては難しいということか。

患児は今朝にはもうすっかり元の状態に戻り、母親は笑顔になっていた。週明けにはアラスカに帰れるでしょう。
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by ny402 | 2005-10-09 10:25 | medicine

どっちが先か

夏休みを利用して来年のレジデント候補の医学生が見学にきている。先週も一人の学生さんが手術を見学していた。
モンロー孔付近にできた腫瘍のため、モンロー孔が閉塞され片側性の脳室拡大が起きている症例。手術は内視鏡を使って、腫瘍のバイオプシーと左右の脳室に交通をつけるセプトストミーを目的にしている。そこで問題。バイオプシーとセプトストミー、どちらを先にやるか?どっちが先でも大して変わりはないのか。その学生さんの答えはバイオプシーが先、理由はバイオプシーの方が重要だから。
私の知る限りでは、答えはセプトストミーが先で、理由はバイオプシーを先行させると、もし腫瘍からの出血がコントロールできない場合、あらかじめセプトストミーをやって髄液の交通性を確立しておかないと内視鏡下では視野を失いかねないから。一つのリスクマネッジメントである。
ところが執刀していたDr.Fが初めにやったのはバイオプシー。2,3回バイオプシーをした後静脈を噛んでしまい止血不可能になり、視野は赤く何も見ない状態に。結局小開頭手術に切り替え、顕微鏡下に止血し、セプトストミーを加えて無事終了。些細に見えるような原則であっても、守らないと患者さんの不利益になるという教科書に出てくるような出来事であった。
手術終了後、学生さんが私に尋ねた。’彼はなぜバイオプシーを先にやったのか’
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by ny402 | 2005-09-26 03:40 | medicine

art

我々の仕事には、art, science, humanityが重要だとオスラーは言った。外科医にとってartの中で大切なものの一つは、手術の技術だと思う。これは症例を多く経験していれば身につくかと言うと決してそうではないような気がする。アメリカの脳神経外科医の場合、7年間のレジデントを終了する頃には約1200から1300例くらいの手術に入るのが平均的だと思うが、それだけやっても下手な人は下手である。これまでの観察から得た結論は、手術の技能、技術はその人の考え方や性格によるような気がする。手術に対する考え方やストラテジーといった幹の部分はもちろん大切だが、手術の中の一つずつのステップの小さな事も手術を成功させたり、合併症を防ぐためには重要である。要は細心の注意を払うということかもしれない。
ここに来てから、髄液漏といったような、マイナーだけれども患児や家族にとっては重要な合併症が多いのが気になったので。
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by ny402 | 2005-09-19 14:22 | medicine

電話

アメリカの実地医療の特徴のひとつは電話だと思う。何でも電話で済ましてしまう。
外科系の場合、日本のように朝みんなで集まってカンファをして、回診をするなどということはまずない。患者を診ているレジデント、フェローがアテンディングと、それこそ電話でチョコチョコと話をして治療方針を決めてしまう。その会話に入らなかった人は何も知らずにすぎてしまう。カンファでコンセンサスを得るのと比べると迅速に事は運ぶが、間違った方向に進んでいく可能性も高いと思う。多くの症例を裁くというような側面があるのでこういう形になるのかもしれないが、表面だけを見た医療になる可能性もある。特に小児医療の場合、先を見通した深く考えた治療戦略が必要だと考える今日この頃である。
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by ny402 | 2005-09-08 20:21 | medicine



小児脳神経外科医が綴る日々雑感
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