ある日の出来事

INR 4.0

前回の続きの前に、先週末のon-callの出来事から。

われわれ脳神経外科医が移植医療に関わる事は稀ですが、それでも年に数回あります。一般的に考えるとドナー側の脳死判定を想像させますが、小児施設で働いているためかそれはあまり多くありません。
今回はレシピエント側のケースでした。3歳男児、肝不全でencephalopathyを来たしてICP管理のためにモニターを留置しました。移植肝を待っていた最初の3日間はICPは正常に保たれていましたが、あと数時間という所でICPがスパイク的に上昇、CTで脳内出血が確認されました。その時点でINR1.7、出血自体は小さく、そのまま保存的に様子をみていましたが、時間が経つにつれてINRは上昇。幸運にも半日後に移植にこぎつけましたが、念のためCTを取ってみると出血は増悪して、脳室内に穿破しています。この時のINRは4.0。本来なら血腫除去、脳室ドレナージを置きたい所ですが、この値では手が出せません。幸い保存治療でその場はしのげましたが、移植は成功したが頭蓋内出血で命を落とすところでした。このcoagulopathyに悩まされる症例が年に2,3必ずあります。その度にPICUの医師の努力に頭が下がる思いです。。
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# by ny402 | 2006-06-21 18:00 | medicine

6月も中旬を過ぎました。という事は、fellowの生活も後残りわずかということです。そこで今後数回に分けて、pediatric neurosurgery fellowとしての個人的な経験や感想、日米の比較などを書いてみたいと思います。

まず始めに量を取り上げてみました。

症例数:圧倒的にアメリカの方が多い。2年とも、アメリカの中でも症例数の多い小児施設で働いた事もありかなりの数が経験できました。手術数で、おそらく700例/年くらいでしょうか。日本の中では一番多い施設でも年間250くらい、以前働いたことがあるこども病院では100くらいでしたから圧倒的な差です。外科医はやはりskillが売り物ですから、skillを獲得しようとしているtraining中の医師にとっては大きな差だと思います。Epsteinは、手術のskillは自転車に乗るようなもので一度獲得してしまえば忘れないといっています。つまり適切な時期にいい指導を受け、skillを獲得し、ある程度の量をこなすことが必要だと思います。そういう意味では、昨年のマイアミでの経験は大きな糧となっています。

次回は、人の量について、の予定です。
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# by ny402 | 2006-06-16 15:00 | medicine

揺さぶられっ子

大隅先生のブログでshaken baby syndromeが話題になっていたので、気になって調べてみた。参考文献はこれこれ
乳幼児のshaken baby症候群の中で触れられているのは22例と少ないが、2番目の文献はSick Kidsを含むカナダ小児施設からのもので対象は364例。これらによるとshaken baby syndromeと診断された対象児の中にはabuse caseでないものも含まれるらしい。”高い、高い”をやっていて受傷する事もあるらしく、abuse caseは32%と記載されている。カナダ文献によるとperpetratorが確認されたのは66%であった。
以前にも書いたが、2歳以下でnon traumaic brain injury患児の場合、abuseを強く疑う事になる。
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# by ny402 | 2006-06-07 19:00 | medicine

6月

6月ですね。残すところあと1ヶ月となり、何となくまとめに入っています。 今日はon-callなのですが、これから脳腫瘍の児がERに来る様です。なぜ、いつも時間外なのでしょうか?
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# by ny402 | 2006-06-01 18:00 | daily life

つづき

昨日書いた記事にusskhawaiiさんからコメントを頂きました。お返事が少し長くなりそうなのでここに書いてみようと思います。

もちろん、頻度の高い疾患から鑑別しなければならないと思います。
アメリカでの教育の優れてる事のひとつにsystematicに考えさせるということがあります。発熱を診たら、鑑別診断として 1oooo, 2@@@@, 3####.....と並べ、得られた情報を基に絞り込んでいきます。そして鑑別診断1を証明するためには、a$$$$、b****、c+++++....という検査が必要で、鑑別診断2のためにはa$$$$、b****、c+++++....という検査が必要、という風に考えろと教わります。もちろん常にこういうやり方をしている訳ではないのですが、大切な考え方だと思います。学生の時、内科診断学の時間に同じ事を教わったような気がしますが、身についていなかった私は昨年マイアミでこの事を思い知らされました。今回のケースではdermal sinusは頻度は少ないけれども見逃してはいけない疾患だと思います。

同じような考え方をすると、腰椎穿刺の前にはICP亢進をr/oしなければならないと言う事を思いつく事が大切で、その方法は何でもよいのではないでしょうか。眼底を見る、ant. fontanelleを触る、CTを撮る、など。眼底などの身体所見のみで診断するのが出来る医者の本来の姿なのでしょうが、実際には最近のCTは撮像時間がほんの2,3秒だし、記録も残るし、ということでCTを撮る事が多いと思いますが。
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# by ny402 | 2006-05-28 04:32 | medicine

一次医療

この1,2日で見た症例から学ぶこと。

生後1ヶ月、女児。2週間前に発熱し、それ以来不機嫌。発熱した時点でprimary care physician (PCP)が診ているが、タイレノールが処方されて経過観察。2週間後、背腰部のピンホールから膿が出てきて夜中ERへ。そこから我々の所へ搬送され、深夜2時に私が診た所、dermal sinusの感染は明らか。MRIを撮ってみると脳、脊髄のほとんどのスペースに膿瘍が観察され、かなり重症。早速、手術。
日本の国試だったか、USMLEだったか忘れたが、この手の典型的な問題は繰り返し出されていた。繰り返す髄膜炎患児に対する鑑別診断の一つとして、このdermal sinusはかなり重要。まとめはこれ

3歳男児。頭痛と手足のだるさのためPCP受診。ウイルス感染後だった事もあり、Guillain-Barreが疑われ、腰椎穿刺が施行されている。この時点で不思議なのが、脊髄のMRIは撮られているのだが、CTを含めて脳の写真は一切撮られていない。2日後、手足の麻痺と意識障害が進み、その時点でCTを撮ってみたらびっくり。巨大な脳腫瘍とそれに伴う重症水頭症。それから我々の所に搬送されたが、脳室ドレナージの準備を待っている間にも意識障害が進行し結局PICUで挿管という事に。術後はテレビを見て笑うまでになっていたが、これから本格的な脳腫瘍摘出の手術が待っている。
腰椎穿刺をやる時は、もちろん施行前に頭蓋内圧亢進が無いことを確かめなければならない。医者としては常識。腰椎穿刺時に、もしこの患児に脳ヘルニアが起こったら絶対負けるだろうなと思った症例。


改めてPCPの重要性を思い知らされた2例でした。そしてこのような事は日常茶飯事に起こっている事を改めて認識させられた気がしました。
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# by ny402 | 2006-05-26 12:00 | medicine

baseball

シアトルに着てからの懸案だった野球観戦に出かけてきました。
この前野球観に行ったのは何時のことやらなどと考えてみると、トロントにいた時ブルージェイズの試合を観に行ったなあ、と思い出します。この2,3年は実験、試験勉強、臨床と精神的余裕が無く、折角NYにいたにも拘らずヤンキースやメッツを観に行けませんでした。

試合は、これといった見せ場は無く、淡々と進んでマリナーズの勝利。イチロー1安打、城島1ホームランと活躍していました。
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# by ny402 | 2006-05-21 09:00 | daily life

脳幹出血

最近医学的な話題から遠ざかっていたので、久しぶりにと思うがあまりいい話題ではないかも。

大人では脳幹出血は稀ではないが、小児で見られるのはあまり無い。と、思っていたら、2日間の間に2人も脳幹出血で入院してきた。一人は長期ステロイド使用例、もう一人は脳幹部腫瘍例。脳幹部腫瘍からの出血なんて稀じゃないのと思って調べてみるとこんなのにでくわす。これによると、診断時の出血例は6.25%、加療中に出血が見られるのはおよそ20%。決して無視は出来ない数字である。
今回の2例は、一般的に言えばどちらとも手術適応は無く、我々も何もしなかった。これも一種のEBMに基づくジャッジだと思うが、本当にそれで良いのかと思うこともある。
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# by ny402 | 2006-05-19 18:00 | medicine

脳神経外科志望減

今週末のon-callでの出来事。
我々が以前手術した児が、別の病気で別の病院に入院しているようです。その親から2度電話がありました。要はその病院に対する不満の電話だったのですが、それを我々に言ってこられてもちょっと困るな、という感じです。親御さんの、誰かに聞いてもらいたい気持ちは理解できるのですが、1回目の電話が土曜日の午後4時、2回目が日曜の早朝4時。ちょっとな、という感じです。
こういう事はどの科でも起こるでしょうが、こんな些細なことの積み重ねがこういう事につながるのでしょうか。
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# by ny402 | 2006-05-14 21:00 | medicine

スライド

今週末東京で開かれる学会に今のボスが招待されている。そこでスライドを日本語にしてくれと頼まれた。出発10時間前に、しかも100枚くらい。ランチョンセミナーでしゃべる臨床のスライドと、特別講演でしゃべる基礎研究の2セット。当然全部は出来ないが、少しばかりやる気を出してやっつけ仕事で仕上げてしまった。40枚ある臨床のスライドは名前まで日本語にしてあげたので英語の比率はほとんどゼロである。どうせアドリブでしゃべるんだろうけど、スライドには英単語が出てこないので大丈夫かな、ちょっと心配だな。
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# by ny402 | 2006-05-09 21:00 | medicine



小児脳神経外科医が綴る日々雑感
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