ある日の出来事

シアトルはもうすっかり秋である。街の木々も紅葉していて、朝晩はもう寒い。我々にとって秋といえば学会シーズンで、今週は日本で脳神経外科学会が開催されたし、来週はボストンでアメリカのコングレスが開かれる。ということで皆でかけてしまって、Dr. Oと二人で留守番をしている。マイアミの時のようにまた10日間連続の0n-callとなりました。どうなることやら。

金曜日の夕方そんな事を思っていたら、いきなりシャント不全の患児が二人もERに来てしまった。結局二人とも手術となり、帰宅したのは深夜だった。その内の一人はアラスカから来たのだけれども、頭痛を訴えて半年くらい前から地元の病院に行っていた。そこでは偏頭痛と診断され、抗うつ剤が処方され、CTも撮られることなく外来通院となっていた。結局患児は今週の月曜日からかなり具合が悪くなり、搬送された日には無呼吸も起こすようになっていた。CTは、正常の範囲内だけれども、以前のスリットな状態にに比べるとやや大きくなった脳室を示していた。小児脳神経外科医が見ればシャント不全だと容易に診断がつく。しかしそれ以外の医師にとっては難しいということか。

患児は今朝にはもうすっかり元の状態に戻り、母親は笑顔になっていた。週明けにはアラスカに帰れるでしょう。
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# by ny402 | 2005-10-09 10:25 | medicine

どっちが先か

夏休みを利用して来年のレジデント候補の医学生が見学にきている。先週も一人の学生さんが手術を見学していた。
モンロー孔付近にできた腫瘍のため、モンロー孔が閉塞され片側性の脳室拡大が起きている症例。手術は内視鏡を使って、腫瘍のバイオプシーと左右の脳室に交通をつけるセプトストミーを目的にしている。そこで問題。バイオプシーとセプトストミー、どちらを先にやるか?どっちが先でも大して変わりはないのか。その学生さんの答えはバイオプシーが先、理由はバイオプシーの方が重要だから。
私の知る限りでは、答えはセプトストミーが先で、理由はバイオプシーを先行させると、もし腫瘍からの出血がコントロールできない場合、あらかじめセプトストミーをやって髄液の交通性を確立しておかないと内視鏡下では視野を失いかねないから。一つのリスクマネッジメントである。
ところが執刀していたDr.Fが初めにやったのはバイオプシー。2,3回バイオプシーをした後静脈を噛んでしまい止血不可能になり、視野は赤く何も見ない状態に。結局小開頭手術に切り替え、顕微鏡下に止血し、セプトストミーを加えて無事終了。些細に見えるような原則であっても、守らないと患者さんの不利益になるという教科書に出てくるような出来事であった。
手術終了後、学生さんが私に尋ねた。’彼はなぜバイオプシーを先にやったのか’
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# by ny402 | 2005-09-26 03:40 | medicine

art

我々の仕事には、art, science, humanityが重要だとオスラーは言った。外科医にとってartの中で大切なものの一つは、手術の技術だと思う。これは症例を多く経験していれば身につくかと言うと決してそうではないような気がする。アメリカの脳神経外科医の場合、7年間のレジデントを終了する頃には約1200から1300例くらいの手術に入るのが平均的だと思うが、それだけやっても下手な人は下手である。これまでの観察から得た結論は、手術の技能、技術はその人の考え方や性格によるような気がする。手術に対する考え方やストラテジーといった幹の部分はもちろん大切だが、手術の中の一つずつのステップの小さな事も手術を成功させたり、合併症を防ぐためには重要である。要は細心の注意を払うということかもしれない。
ここに来てから、髄液漏といったような、マイナーだけれども患児や家族にとっては重要な合併症が多いのが気になったので。
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# by ny402 | 2005-09-19 14:22 | medicine

最近

少し暇である。手術が少なく、しかもマイナーな手術なので術後もスムーズにいっているのが要因だと思う。医者が暇なのはある意味いい事だし、また何時忙しくなるか分からないから休める時に休んでおきたいものだ。でもこの暇なときに論文を書かねば。

昨夜はon-callだったので、電話で新入院の患児の口頭オーダーを出しました。最後に名前はと訊かれたので、名前とスペルを言ったところ'Are you Japanese?'と尋ねられました。'Yes'と答えた所’私も日本人です’と少し変なアクセントで答えるではないか。昨年もPICUに日本人のRNがいて一緒に働きました。結構いるんだなあ。日本人もがんばってるじゃん。
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# by ny402 | 2005-09-16 07:27 | daily life

電話

アメリカの実地医療の特徴のひとつは電話だと思う。何でも電話で済ましてしまう。
外科系の場合、日本のように朝みんなで集まってカンファをして、回診をするなどということはまずない。患者を診ているレジデント、フェローがアテンディングと、それこそ電話でチョコチョコと話をして治療方針を決めてしまう。その会話に入らなかった人は何も知らずにすぎてしまう。カンファでコンセンサスを得るのと比べると迅速に事は運ぶが、間違った方向に進んでいく可能性も高いと思う。多くの症例を裁くというような側面があるのでこういう形になるのかもしれないが、表面だけを見た医療になる可能性もある。特に小児医療の場合、先を見通した深く考えた治療戦略が必要だと考える今日この頃である。
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# by ny402 | 2005-09-08 20:21 | medicine

アラスカ

以前にも書きましたが、ここの病院は5州をカバーしていて、その中にアラスカが含まれています。シアトルからは3時間ほどのフライトでいけるようです。
さて、我々が診る患児の中にはアラスカ住民が結構います。昨年はハイチやキューバの子供たちも診たりしましたから、なんとなく貴重な体験をしているような気がします。もちろん言葉や文化などの社会的背景以外の部分は何にも違いはないんですけれど。(英語とスペイン語のバイリンガルの人を対象にfMRIで2言語による脳活性を見ると、英語とスペイン語では異なった場所が活動しているらしいという論文があるので、言語中枢付近を手術する時はどんな言語を使うのかで手術のアプローチが違ってくるかもしれませんが)
昨日、シャントプロブレムがこじれて地元の病院ではどうにもならなくなった少年がアラスカから運ばれてきました。彼はnative Americanで、英語ではなくnative Americanの言葉(なんという言語なのか忘れてしまいました)を話します。母親はそのnative Americanの言葉を失いたくないという事で子供に英語ではなくその言葉をしゃべらせているようです。その彼も土曜日にVA Shunt設置を行い術後も元気です。明日にもアラスカへ帰れるでしょう。そして民族文化を継承する一人となっていくかもしれません。
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# by ny402 | 2005-09-03 16:00 | medicine

9月

9月になりました。シアトルはもう、朝晩寒いくらいの季節です。
仕事が始まってから2週間ぐらい過ぎましたが、少しずつ慣れてきたという感じです。初めてのところで仕事をするのはやはり疲れます。しかも先週末、今週末とon-callで3週間連続で働きつづけることになりました。どうなることやら??

ハリケーン、カトリーナが大きな被害をもたらしているようです。マイアミに上陸した時のテレビ映像も凄い物でした。なぎ倒された木で道路がふさがれている写真を知人家族がおくってくれたり、以前住んでいた一帯は丸一日停電したというような事を聞いたりしました。。昨年は4つハリケーンがマイアミに来ましたが幸運なことに直撃を免れそれほど大きな被害はありませんでした。
その後カトリーナは中南部に再上陸し大きな被害をもたらしました。これこれを読む限りでは、やはりしわ寄せは弱者のところに来るようです。
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# by ny402 | 2005-09-02 10:06 | daily life

craniosynostosis

今の病院は5州をカバーしているので多くの患児を診ることになる。その中でも多い疾患のひとつが頭蓋早期癒合症。週平均3例ぐらい手術している。そこで新ためて勉強してみたら、いくつかの発見があったので、少しばかり書いてみたいと思います。

まず日本にいた時に使っていた教科書。脳神経外科医なら誰でも持っているバイブル的教科書を見てみたら記載が少し古い事に気づく。ただ私が持っているのは最新版の1つ前のバージョンなのだけれども。
もうひとつはまるで知らなかったこと。昨年も50例くらい手術しているのに全く知らなかった。不勉強を嘆く。というのはこの疾患の患児が年長になったとき41~47%でlearning disabilityになるらしい。これは手術施行時期とは無関係。今まで脳が成長するときのICPだけが問題だと思っていた。
この疾患はFGF/FGFRに関連した遺伝疾患ということは分かっている。そこで少し調べてみると神経の発生、成長、修復などにFGF/FGFRが係わっているという様な基本的な事から、記憶にはFGF18が必要というような論文まで出ている。成育という観点からはこのような事も知っている必要ありと、つくづく自分の不勉強を嘆く。
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# by ny402 | 2005-08-20 13:16 | medicine

登場人物紹介

いつもの事ながら書類の手続きに時間がかかり、ようやく仕事が始まりました。
そこで今日の話題は、これからこのブログに出てくるかもしれない登場人物をご紹介します。

ボスDr. E: いつも冗談ばかり言っている。UWのchairman。来年のCNSの会長
アテンディング Dr. A:まじめで几帳面。spineとpediのフェローを修了
アテンディング Dr. O:てんかんで有名なDr.Oの息子。epilepsyとpediのフェローを修了
フェロー Dr.F:UWのチーフレジデントからステップアップ。イラン出身
レジデント Dr.G:ロシアで10年以上の経験があるが、ここでまたレジデントからやっている
ナースプラクティショナー 3人

これから約1年、この人たちと一緒に仕事をしていきます。日常感じた些細なことをまた綴る事にしますね。
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# by ny402 | 2005-08-19 13:27 | medicine

a new family member

娘の誕生日までにはまだ1ヶ月あるのだが、誕生日月間第二段として誕生日プレゼントを買ってきた。いろいろ欲しい物が変わって最終的に決まったものがなぜかハムスター。PETCOで本人が選んだのが写真の彼女。メスなので、Kathyという名前にしようとか、EmilyがいいとかElizabethにしようとかいろいろ出たののだけれど最終的に決まったのが、葉月。名前の意味も分からないし、ハムスターが大きくなったらギニアピッグなる?などといっている娘は今のところ夢中になっているが、いつまで続くことやら。
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# by ny402 | 2005-08-08 04:17 | daily life



小児脳神経外科医が綴る日々雑感
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